
記念すべき第1回目の生地ではビジネスの戦闘服ともいえるスーツの生地選びに焦点を当ててみようと思います。皆さんはスーツを買いに行く際にどこに焦点を当てて選んでますか?生地、価格、ブランド名、動きやすさ/洗いやすさ等でしょうか?
折角普段使いの服よりも少し高いお金を払って物を買うのですから少しでもカッコ良く決めれる1着を欲しいっですよね?私自身もスーツ選びにはかなりの時間をかけるタイプです。
ですがその思いとは別に実際、スーツを選ぶとき多くの人は何となくで「価格帯」「デザイン」や「ブランド名」に意識を取られがちです。
しかし実は、スーツの印象を決めているのは“生地そのもの”です。同じ形・同じ色でも、生地の風合いやその生地を形作っている糸のスペック等が少し違うだけで来た時の映え方、見え方や体感は大きく変わります。
繊維専門商社で長年、国内外のスーツ生地を扱ってきた私が、本当に理解しておくべきスーツ生地選びのポイントを徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたのスーツ選びはグッと合理的かつ自信あるものになっているはずです。
生地こそスーツの本質である
結論から言うと、スーツの“良し悪し”は生地でほぼ決まります。
なぜなら、冒頭でも述べましたが同じシルエット・同じ色でも、生地や素材(ウール/コットン/ポリエステル等の合繊等)が変われば見た目・着心地・耐久性・身体への馴染み方まで変わるからです。
例えば、ウール100%の上質な生地は光沢の出方が柔らかく、立体感あるシルエットをつくります。(ウールの中にも昨今はSuper○○’sといった感じでウールの中でも格付けがあります。その詳細はまた別途記載したいと思います。)
対して安価なポリエステル等の合繊等が入った生地は光沢が人工的に見え、単体では上品さが弱いことがあります。例えば同じネイビーでも、ウール100%とポリエステル100%のネイビーでは見る人の感覚は大きく違うのです。
商社営業時代、多くのブランド担当者からも同じ意見を聞きました――
「スーツで一番相談されるのはサイズではなく“生地選び”」
それほど、見た目の印象に直接影響するのが生地なのです。
素材ごとの特徴を理解する
まずはスーツ生地の大原則として、素材の違いとその性質を押さえておきましょう。
ここを理解すると、選択肢が曖昧な“好き嫌い”から合理的な判断に変わりますし、今自身が身に着けてる物はこの素材だ。という愛着感にも大いにつながります。
・ウール(Wool) — スーツの王道素材

ウール(=羊)は「スーツの基本」といえる素材で、保温性・吸湿性・シワの回復性に優れており、スーツ全体のバランスが非常に良い素材です。※ウールについては別生地で補足を行います。一般的にはオーストラリアや南米に生息すると言われているメリノウールという品種のものが多く市場には出回っており、繊維の細さが細ければ細いほどの高価なものとされていて、生地や糸にした時の光沢や映え方は確実に違いがわかります。また特徴としては天然繊維でありながら、保温性や抗菌性、特殊なタンパク質等も含むことから非常に多くの機能性を保持しており、生地次第で秋冬向け以外にも春や暑い夏まで幅広く使うことが可能です。
・コットン(Cotton) — カジュアル寄りの上質さ

綿でつくられたスーツ生地は柔らかさと吸湿性が強みですが、シワになりやすい点は覚えておきたいポイント。ビジネスよりも、ややカジュアル等仕立となるケースが多い為、カジュアルなシーンや少し抜け感や余裕を見せたいシーンに適しています。
・リネン(Linen) — 夏の快適さと軽快感

麻(リネン)はさらっとした触感と高い通気性が特徴。
春夏の爽やかさを求めるなら外せない選択肢ですが、独特のシワ感が出るため、きちんと感を重視する場面では注意が必要です。麻といってもラミーやへヘンプ等ジャンルは異なり非常に歴史の深い繊維です。
・シルク/カシミヤ — 贅沢な質感の演出


シルクは光沢感が上品で、カシミヤは驚くほど柔らかく暖かい。
ただしどちらも耐久性がやや弱いため、特別な場面やセットアップでの使用が向いています。ただ昨今大手ブランドも出してるようなウール×シルクの生地は別格で海外等の富裕層には非常に好まれてます。
・化学繊維(ポリエステル、ナイロン等) — 実用性重視

ポリエステルなどは安価で耐久性が高く、シワにも強いというメリットがあります。また染色も容易なことが多い為、様々なジャンルの色使いが可能で選択肢が広い且つガシガシ着れるという点ではオススメです。
ただし光沢や質感の“深み”は天然素材に劣るケースが多く、ビジネス上質さを求めるなら天然素材優先が一般論です。またウール×ポリエステル等の混紡(2種類以上の原料を混ぜて作られてる物)生地の場合はウールとポリエステルのそれぞれの良さを出しつつデメリットを補うという面白さもあるため場合によってはオススメです。
季節・シーンで最適な生地を選ぶ
素材の違いを理解したら、次に季節と着用シーンで最適な選び方を知っておきましょう。
・春・秋(オールシーズン)
ウールベースで中程度の厚みの生地が最も使いやすい。
季節の変わり目でも快適に過ごせ、ビジネスシーンではまず迷わない選択です。
・夏
「サマーウール」「リネン」「コットン混」など、通気性重視の素材がおすすめ。
とくに外回りが多い日は、熱がこもらない生地を選ぶことで体感が全く違ってきます。
・秋・冬
目の詰まったウールや、カシミヤ混の生地が保温性と高級感を両立。
見た目にも季節感が出るため、仕事の信頼感や落ち着いた印象にもつながります。
実例で理解する生地の違い
ここで1つ、実際の経験を紹介します。
ある商談でスーツの生地について質問されたとき、
私はイタリア生地の違いを説明しました。
「同じネイビーでも、ウール100%とウール×ポリエステルでは光沢の出方が違い、
ウール100%は自然光で柔らかい光沢、混紡は光が均一に反射するシャープさが特徴です。」
その時の担当者はこう言いました。
「確かに同じ色でも見え方が違いますね。これならクライアントにも安心して提案できます。」
実際、生地の質感を言語化できる営業は信頼度が上がるのです。
これは服のプロだからこそ提供できる価値でもあります。
まとめ
スーツは形やブランド以前に、「何を着ているか」より「どんな生地でできているか」が印象を決めています。
ウールを中心に、コットン・リネン・シルクなど素材ごとの特徴を理解し、季節やシーンに合わせた選び方をマスターすることが重要です。
単なる服選びを超えた、あなたらしい戦略的な装いをこの機会に身につけましょう。
→ 次の記事では「ウール・コットン・リネンの違いを理解する」について具体的に掘り下げます。